胸キュンMonday ~甘く切ないすれ違いの恋~
【卓弥】声
【卓弥】



最後の奈津姫達との時間を終えた俺は、街をうろついた。



結局、行き場のない俺に変わりはない。



充電のなくなった携帯を見て、久しぶりに家に帰ろうと思った。


最近、大学の友達の寮や友達の家、ここらのホテルに泊まってばかりで、家に帰ってなかった。



いくら男だからって、家族も心配してる…か。



俺は、10円玉を手に持ち公衆電話を探す。


携帯電話の普及した今の日本には、なかなか公衆電話もないことに気付く。


やっと見つけた汚い公衆電話から、家に電話をかけた。


おかんは、心配で友達に電話をかけていたらしい。

無事なことはわかってたけど、そりゃ…泣くよな。


受話器から聞こえる初めて聞くおかんの泣き声に、俺は自分が犯してしまった罪の重さを感じる。



俺は、ちょっとお洒落なケーキ屋さんに入り、おかんの好きなシュークリームを5つ買った。


泣かせたお詫びに全部おかんにやる。

太るわよ…と言いながら全部食べるおかんの姿を想像すると笑える。



そのケーキ屋から少し歩いたら、以前俺が過ちを犯しそうになった公園があった。


俺は少し立ち止まり、記憶を整理する。


…千恵理………


あの子との出会いも、あの時の俺には救いのようだった。


自分の愚かさや、弱さに自暴自棄になっていた俺の前に現れたかわいい少女。


どんな俺でも好きだと言ってくれたあの言葉で俺は力をもらったよ。




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