胸キュンMonday ~甘く切ないすれ違いの恋~
懐かしい高校の傍の土手に行くって事は…
私の足はつい高校へと向かいたくなる。
「たっくん来るまで、先生んとこに直といるから!!」
そんな私の言葉に、たっくんは電話の向こうで大笑いしてた。
『思った通りだな!俺も先生んとこ行こうって思ってた。』
懐かしいドーナツ屋さんで直と待ち合わせ。
直は、夏休みに先生と旅行に行く計画があるんだって目をキラキラさせながらドーナツを口に入れる。
山ほどのパンフレットを持って、大好きな高校の門をくぐる。
卒業してから何度もきたけれど、やっぱりここが一番好きな場所だって思う。
短大も楽しいけど、高校はなんだか温かいんだ。
どんな私達も包み込んでくれるような不思議な空気。
もしかしたら、それは高校じゃなくて『先生』なのかも知れないね。
校門から校舎までの坂道は季節によって顔を変える。
春は桜のトンネルになる。
見上げると桜の花びらが空から降ってくるような美しさ。
夏は生い茂った葉のおかげで
ひんやりと涼しいんだ。
セミの鳴き声と木々の揺れる音がなんとも言えないハーモニー。
秋には色とりどりの葉が紅葉を楽しませてくれる。
下校する時の秋のちょっと肌寒い風が切なかった。
冬はとにかく歩きにくかった。
雪が降ると、滑って転びそうになった。
年に数回しか降らなかった雪だけど…
この坂道から見る雪はすごく綺麗で今でもハッキリ覚えてる。
春はまだかと、裸になった木々がわくわくしているように見えた。
こんな素敵な坂道に、私達は守られてたんだ。
遅刻しそうになると、先生達が怒鳴りながら一緒に走ってくれる。
そういえば、直も先生と一緒に走ったって言ってたっけ。
上まで走った時の爽快感ったらすごいんだから。
走った人にしかわかんないけどね。
「直、走る?」
「久々に…走っちゃう?」
7月のダッシュは
想像以上にキツくて…
汗だくになった。
だけど、私も直も嬉しくてずっと笑ってた。