求命
思い切り左右の頬をビンタされた。これが儀式の始まりだった。それだけで彼女は抵抗する事すらやめた。そして、祈った。実家にいる両親に、友人に。今までの感謝の気持ちを思った。彼女の思いは届く事はないだろう。それでも祈る、思う事しか彼女には許されていなかった。
フローリングの廊下に涙のシミがいくつも出来ていた。それが彼女の見た最期の景色だった。
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