求命
白いマンション。それほど大きくもなく、かと言って小さいわけでもない。よく見る賃貸マンションの大きさだ。このマンションに獲物の匂いがする。若い女の匂い。目の前には自動ドアがある。オートロックになっているから、容易に入る事は出来ない。はずだった。
大伍だった男は自動ドアの前に立つ。もちろん、反応する訳がない。十秒ほど待つ。その間に男の体が透けていった。ちょうど男の腰辺りに、オートロックの制御板が見える。
抜けた。まるで、自動ドアが開いたかのように、ドアをすり抜けた。
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