求命
山本と香川は走った。大伍の姿を求め、ひたすら走った。しかし、見つからない。どこに言ったのかもわからないのだから当然だ。身を切る寒さの中で、二人だけは額に汗を滲ませていた。
「くそっ、どこに行ったんだ?」
「どうします?」
「どうしますたって・・・。正直に言うしかないだろう・・・。」
語尾を濁らせた。しかし、それ以外に術を思いつかない。山本は無線を手に取った。
「あ、村上さんですか?実は・・・。」
「バカ野郎。お前ってやつは・・・。」
無線から聞こえてくる村上の怒鳴り声を、香川は黙って聞いていた。
その時、香川の頭にぼんやりと浮かんだ。この辺にある会社の女子寮がある。寮と言っても普通のマンションを一棟丸ごと借り切っているだけだから、普通のマンションと見分けはつかない。ただ、これまで殺された被害者と同じような年齢の者がかなりいるはずだ。仮に自分が犯人だったらと考えた。これを見逃す手はない。ある意味選び放題だ。
そう考えると、いてもたってもいられなくなった。まだ、山本は怒鳴られている。香川は走った。
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