相合傘
次の日の朝、俺はインターホンの乱鳴で起きる事はなかった。
アキちゃんが早速合鍵を使って、俺の部屋に入ってきたからだ。
入ってきた時に、なんか面白い~とか何とか言っていた。
そう思うのはお前さんだけだよ…。って、言ってやろうと思ってた。
でも……
「もしもーし、まだ寝てんの?」
「……」
アキちゃんはゆさゆさと俺の体を揺するけど、俺はそれに対して返事が出来なかった。
なんだろ、体が滅茶苦茶ダルい。
頭もガンガンして、誰かに内部から叩かれているみたいだし…
夏なのに、凄く寒い。
「おーい、ショウー?」
呼びかけてくるアキちゃんの顔が、ぼやけている。
アキちゃんは俺の額にそっと手をのせた。
ひんやりとした、冷たい手。
「…ショウ、熱あるんじゃない?」
「そー、かも」
俺は上半身を起こして、時計を見た。
あ、あと2時間したら大学の講義が始まってしまう。
そう思いながら、一応体温計を手にとって、体温を計ってみることに。
アキちゃんはいつも俺がしているエプロンを手に取ると、ふわりとそれをつけた。
アキちゃんより一回り小さい俺がつけるエプロンは、やっぱりアキちゃんの体には小さくて。
「何度?」
「…38度7分」
「ほぼ39度じゃん。今日の講義は休みだね。もちろんバイトも」
そう言いながら米を研ぎ始めるアキちゃんは、軽く溜め息を吐いた。
「…何する気ですか…?」
「お粥作るの」
「料理しないって言ってなかったっけ?」
「このくらい作れる」
「…キッチン、壊さないでね」
「わぁ~、信用無いなぁ」
笑いながらアキちゃんは、炊飯器をセット。
あ、そうか。お粥なんて炊飯器のスイッチ一つで出来ちゃうから、キッチンが壊されることはないか。