相合傘



「ってことで、お家に到着~。夕飯は外で食べてもいいけど、ショウが作った冷やし中華が食べたいから、それを食べましょー♪」
「…えー、だったら、ラーメン屋かどっかにしようよ」
「ぅう~、それでもいいけどさ、水族館行った後にラーメン屋って、なんかムードないじゃん」

…俺は別に…何のムードも求めてないんだけど。

「だったら、冷やし中華じゃないのを食べれば?」

だって、それを言うなら、水族館行った後に冷やし中華ってのも、何かズレてる気がするし…。

「ヤダ、絶対にショウが作った冷やし中華がいい~」

子供の様な口調で、ぷくぅっと頬を膨らませるアキちゃん。
…お前はお母さんとスーパーに行ったけどお菓子を買ってくれなくて、駄々を捏ねておねだりする子供かッ!!
このまま会話を続けても、アキちゃんが絶対に俺の言う事を受け入れてくれるとは思わない。
仕方がなく、溜め息交じりに分かったと返事をすれば、アキちゃんはパァっと向日葵の様な笑顔になった。

「やったー!ありがとうッ!!」

そう言って、俺の腕をブンブンと千切れそうな勢いで振りまくった。
本当に嬉しそうな顔をしているアキちゃんに、俺は一瞬だけ、ほんの一瞬だけ……、ドキッとした。

……て、ちょぉっと待てッ!!
 


相手は自分と同じ、女の子ですー…ッ!!


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