君だけに夢をもう一度
その日、敦子は、朝から父親に連れられて軽井沢に向かっていた。
ゴールデンウィーク期間ということもあり、祖母の家へ泊まりに行った。

敦子は、父親が運転する車で出かけるのが好きだった。

普段は、厳しい父親だったが、車を運転している時は妙に優しかった。

もともと車好きな父親は、運転している表情をみると、家にいる時より穏やかな表情になる。

あとで母親から聞いたことだが、その頃、父親の病院は開業したばかりで運営的問題で悩んでいた。
そのため、父親にとっては、車を運転する事が唯一の気分転換だった。


よく、ラジオをつけて運転してくれた。
交通情報や天気予報などを聞く目的だった。
敦子は、助手席から車窓の風景をながめながら、時折、流れてくる音楽に耳を傾けた。

「では、最近、話題のサザンオールスターズの曲です」

サザン・・・・・・?
パァソナリティーの言葉に敦子は反応した。
サザンって・・・・・・あの芸人だ・・・・・・と、心の中で思った。

「こんなバラードを作れるって、桑田君ってすごいですね」

桑田・・・・・・?  あの人って桑田っていうんだ。
そこで敦子は、はじめて芸人の名前を知った。

「それでは、聞いて下さい。『いとしのエリー』です」
パーソナリティーが、曲の紹介した。



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