君だけに夢をもう一度
「酔っぱらいから、誘われて迷惑だった? 」
後部席で隣合わせに座った敦子が、正和の体に寄りかかるようにして尋ねた。

「酔っているのか? 」
正和が、呆れたように尋ねた。

「酔ってなんかいないわよ」
敦子は、正和に寄りかかるのをやめた。

「迷惑なんかとは思っていない」
正和があっさり答えた。

「ただ、君が昔より強くなったって言うか・・・・・・たくましく感じて少し驚いてる」
「私が・・・・・・?」

「学生時代の君は、お嬢様ぽくって・・・・・・少女のような感じだったからな」

敦子がじっと正和を見つめた。

その姿を見て正和は慌てて、
「勘違いしないでほしいんだけど、今の君が悪いってことじゃないんだ。お互いに時間が経つていい大人になったってことを、ずっと感じてたんだ」

「そうね・・・・・・昔よりはたくましくなったかもしれないわね」
敦子が納得するように言った。

「でも、そうならなきゃ、生きていけないのよ 」
「・・・・・・」

正和は何も答えなかった。

社会で生きてゆくことは、敦子のように強引な強さみたいなものは必要だと、正和はわかっていた。
それは、正和にはないものだった。


< 46 / 76 >

この作品をシェア

pagetop