Pure*Love―透明人間が恋をした―


みるみる透き通っていく自分の体を見つめながら、ローズはキュッと服を掴んだ。


「まったく…この体で外に出るなんて。人に知れたら大変な騒ぎですぞ?」

白衣を纏った老医師が、自慢の白い顎髭を撫でながら言う。


しかしローズは応えようとする素振りも見せず、ただ黙って下を向くばかりだった。


そんなローズに、老医師は浅く溜め息を吐き、注射針に目を落とした。


「…よし、これでいい。」

処置を終えた老医師は、ローズに向かって真っ直ぐに言った。

「貴女はクリスタルの身分でなければならない。
何故なら、貴女はこの国の姫君だからだ。…失礼。」

そう言って、老医師は黒い往診鞄を持って出て行った。


ローズは、老医師が部屋から出て行くまで、彼の背中をジッと睨んでいた。


バタン、ドアが閉じるのを確認してから、ローズは溜め息混じりに言った。

「…もう寝るわ。今日は疲れたの。」


「姫様!そのような小汚いドレスはお脱ぎくださいまし!
こんなもの、一体どこで手に入れたんだか…」

ハァ、ばぁやの深い溜め息を聞きながら、ローズは遠すぎる天井を見つめた。


< 11 / 11 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

ありがとう
ぴよ子/著

総文字数/8,342

ホラー・オカルト37ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
むかーしむかし、あるところに それはそれはかわいい女の子がいたんだって。 女の子は何かもらうと、「ありがとう」と 天使のような笑みを見せたんだって。 その笑顔が見たくて、おとなは何でも その女の子に与えたんだって。 ーーーーーーーーーーーーーーー 野いちご10周年記念の限定小説です。 小説を読むためのパスワード取得方法は 5月30日(火)に野いちご10周年ページにて 発表予定です。
ねぇ、明日香
ぴよ子/著

総文字数/2,739

ホラー・オカルト12ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ある雨の日、 ひとりの少女が学校の屋上から飛び降りた。 彼女の遺書にはこう記されていた。 『しばらく眠ったら、必ず会いに行きます ――――明日香』
永遠の果て。
ぴよ子/著

総文字数/2,332

ファンタジー8ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
どうしてもキミを助けたい。 どうしてもキミを守りたい。 何度うまくいかなくたって、ボクがその度進化するなら 何度だってキミの元へ。 人工知能AI搭載のアンドロイド 翔琉ーカケルー 彼の住む西暦3745年は、個人が望む理想像を全て実現してくれるAI搭載のアンドロイドが溢れ返っている。 人間も、人間同士よりもアンドロイドを伴侶に選び、子孫は繁栄せず絶滅危機に瀕していた。 彼のミッションは、人類の絶滅危機を打破する希望の星、結衣を死から守り、珠樹の子どもを産ませることーー

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop