アンバランスな恋心
「妹の恋人の弟も一緒に
行くらしいんだけど

その弟が大学の友人も一緒に
連れていくんだって

最年長者である私たちがいたら
学生引率の旅行みたいじゃない

せっかくの夏休みよ

私だって教師の仕事を
忘れたいわ」

光太郎は
肩を揺らして笑った

「じゃ、俺と旅行する?」

え?

「いいの?
私、旅行中も浮気するよ?
きっと…」

「なら、部屋に閉じ込めておくよ」

「光太郎は
閉じ込めたりしないわ
優しいもの」

「どうだろうね?

旅行、考えてくれる?」

私は頷くと
光太郎とキスをした

街の中で
キスするのは好き

だって
私はこの人に愛されてるって
気がするでしょ

実際は違うのかもしれないけれど

誰かに
私は男にキスされる女よって
自慢できそうで

とくに
彼氏のいない女性が
見たら

私をむかつくって
思うじゃない

それが快感

苛立ちの目で見られると
なんだか
勝負に勝った気がするの

最初っから
勝負なんてしないのに

勝った気になれるのよね

私って嫌な女でしょ?
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