アンバランスな恋心
『真琴?
どうしたの?』

「うん、とくに
意味はないの

ただ声が聞きたくて」

『嘘ばっかり
俺は電車待ちの間の
話し相手?』

光太郎の明るい声がした

嬉しそうな声だ
私も光汰と話す時は
こんなふうに
明るい声なんだろうな

嬉しくて
年甲斐もなく
嬉しくなっちゃうんだ

「近いけど
ちょっと違う
家に帰るまでの
話し相手よ」

『だからマンションまで
送るって言ってるのに』

「だーめ
妹に見られたら
怒られるわ
私はまじめな高校教師って
ことになってるんだから」

『嘘だね
男と一緒に住んでるじゃないの?』

「あら、私を信用してないわね」

『どうかな?
(光太郎? 誰?)』

電話の向こうで
女性の声が聞こえた

え?
どういうこと?

光太郎には恋人は
いないはずよ

「あら、彼女?」

『まあ、そんなとこ』

「じゃ、切るわ」

私は電話を切った
携帯を鞄に放り込むと
公園のベンチに座った

裏切られた

そう思った
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