アンバランスな恋心
「女性に手を挙げる男は
最低だってわかってるけど
今のマコ姉は見てられないよ」

「なら見なくていいわ」

光ちゃんは私の携帯を持ったまま
ベンチを離れて行った

私は涙が出てきた

苛々しているのに
腹が立っているのに

出てくるのは
涙だけだった

光ちゃんはもう
ココとかいう女のモノだ

私が『好き』だからって
どうにかできる位置には
もういないのに

どうして私の心の中に
入ってこようとするの

手を伸ばしたって
もう光ちゃんは
私に触れてくれない

触れたくたって
恋人がいるのよ

私にどうしろって
言うのよ

一人で生きていくには
夜がつらいのよ

男の温もりを知ってしまった体は

一人がつらいって叫ぶの

耐えられないのよ

冷たいシーツに足を入れる
寂しさが
光ちゃんにはわからないわ

誰も待っていない広い家に
帰る苦痛が

光ちゃんには
わからない

真っ暗な玄関に
ぺたぺたと廊下を歩いて
手探りで
電気をつける

その場は明るくなったって
それ以外の暗い部屋を見て

もっと心が悲しくなる

ビールを飲んだって
何の解決にもならない

時計の針しか聞こえないの
話し声も聞こえない

どこを触っても
ぬくもりなんかなくて

冷たいだけ

そういう生活に
一人で耐えろって言うの?
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