アンバランスな恋心

悲しみを抱く夜

私たちは無言で居間に向かった

光ちゃんはソファに腰をおろして
足を組んだ

私は鞄を持ったまま
光ちゃんの視界に入る位置で
立っていた

隣に座るには
ちょっと気が引ける

床に座るの気も
ダイニングにある椅子に座る気にも
なれなかった

「僕の言いたいことはわかってるよね」

私はこくんと頷いた
光ちゃんはポケットに入れていた鍵や
財布、免許証入れを
テーブルの上に並べた

「どうして僕に連絡しないの?」

光ちゃんが私の目を見た

私は目をそらすと
唇を舐めた

「向こうから連絡があったから」

「あったから?」

「会った」

「それで?」

「食事して帰ってきた」

「食事だけ?」

「うん」

旅行会社にも行ったけど
光ちゃんには言えない

光太郎と一緒に
旅行に行く予定なんて言ったら
絶対に怒る

これ以上
光ちゃんの機嫌を損ねたくない
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