気まぐれお嬢様にご用心☆
「翼、今日部活無いんだろ。一緒に帰ろうぜ」

俺は面倒臭いから『部活』というものには所属していない。
確か翼が『弓道部』で楓が『陸上部』だっけ。
二人ともお嬢様のわりにはアクティブだったりするんだよな。

「別にいいけど……」
彼女の視線の先が、薫に向けられている理由はおおよそ見当はつくが。

「じゃ、決まり」
翼には本当のこと話しておくべきだよな、やっぱ。


「千晶!一緒に帰ろうっ!」
彼女と俺のやり取りを見ていた薫が割って入ってきた。

「ってお前、部活は入らないのか?テニスあんなに頑張っていたじゃないか……全国大会で三位。もったいないぞ」

「肘を痛めちゃって。もうテニスできないのよ」
そんな風に明るく言われるとこっちもどう言葉をかけていいのか迷う。

「いつからなんだ?」

「千晶が転校してからすぐかなっ。私にはもうテニスしかなかったから。……誰かさんのせいで」

「……薫」


俺のせいなのか?


『ごめん。俺は薫とは幼馴染みだから……それ以上にはなれない』



あの時の記憶が再び頭ん中でリピートし始めた。
屋上の夕焼けがとても綺麗だったことを今でも鮮明に覚えてる。


「でも過去のことはもういいんだ!その方が気が楽でしょ、お互い。千晶も過去のことは忘れて、久しぶりに再会したんだから楽しくやろう!」

「……」

告白を断った俺に対して薫が笑顔で接してくれることに、なんだか少しだけ安心していた。

「帰ろうか?」

「……そうだな」

薫に圧倒されてしまい拒む余地はあるはずも無く、俺たちは結局、三人で下校することになったのだった。
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