気まぐれお嬢様にご用心☆

「さぁ、参りましょう。ご主人様はあちらでございます」
彼女の登場があまりに衝撃的すぎて、肝心なことを忘れかけていた。
榊の言葉で迫り来る現実にふっと戻された感じだ。

千晶はごくっと息を飲んだ。

「ここの先にじいちゃんが……」
十六年目にして初めて会う。榊に案内されたその部屋は屋敷の一階にあり、玄関からは一直線で辿り着ける。

「どうぞ」

扉が開けられ視線の先には白髪頭の老人が居た。

「お前が『千晶』か。わしはてっきり……」

「てっきり……？」

「あっ、いや、ようこそ。我が屋敷へ」

「初めまして、波柴千晶です。これからよろしくお願いします」
自分のじいちゃんに敬語を使うのも変だと分かっていながら、やはり長年会ってないせいか自然と敬語になってしまう。

「まぁまぁ、そんなに固くならずに自分の家のようにくつろぎなさい」

「はい。ありがとうございます」
なんだ……別にそんな緊張することもなかったな。
千晶は自分が構えていたほどではなかったことに少しだけ安堵する。