青色シーソー
直弥(なや)




――小学生の頃



「男が赤いランドセルしょってるぞ!」


「オカマだコイツ」



ひゃひゃひゃ、と笑う男子を

精一杯睨み付けて

席に座る。



「おい、ナオヤくん?」


お調子者の男子が

私の顔を覗き込みながら

ナオヤを強調しておちょくってくる。



「飽きないなぁー。

男だったらそんな小さい事で

騒ぐのやめなよ」



そう言って、

男子のからかいを交わすのが

私の毎朝の日課。






そして帰り道に

小さな遠回りをして帰るのも



私の悲しい日課。




家に帰れば


優しいお母さんと

頼もしいお父さんが


温かく「おかえり」って

迎えてくれる。



そんなの嘘。




冷え切った関係の両親が


バラバラに私を出迎えてくれる。





かたっぽから受ける愛と


もうかたっぽから受ける愛を足しても




二人からの愛には

ならない。




寂しい時に傍に居てくれるのは

お母さんじゃなくて ぬいぐるみ。


わがままを叱ってくれるのは

お父さんじゃなくて 自制心。


眠りにつかせてくれるのは

お母さんの子守唄じゃなくて 両親の罵声。








いつか、こんな毎日から


誰かが救い出してくれる。






仕事一筋のお父さんが家を出て行った時


ふいにそう信じた。




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