【短】君の瞳に…『ホタルの住む森 番外編』
3.思い出の地

緑の木々が風に煽られて、サラサラと優しい歌を奏でる。

行き先に目的があるわけでも無いのに、何かに惹かれるように記憶を辿って林道を歩くうち、陽歌はいつしかハッキリと記憶に残っている見覚えのある景色の中にいた。

いつだったか晃と一緒にこの場所に来た事がある。

帰ったら晃に聞いてみようと、陽歌はこの場所を写真に納める為、携帯を取り出した。


―――と、同時に携帯が鳴った。


表示は晃だ。

何も言わずに家を出て来てから一度も連絡がつかなかった事もあり、叱られるかもしれないと覚悟を決めて携帯を開いた。

「…もしもし?晃さん」

『陽歌、どう?無理していない?』

怒っている様子もなく、むしろ陽歌の身体を心配してくれる事にホッとして緊張が解けた陽歌に、ようやく笑みが戻ってきた。


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