あの音が聞きたくて
病院から帰る途中の、
車の中でも、麻衣は涙を堪えるので精一杯だった。

チャイルドシートにチョコンと座っているリオンは
じーっとママを見つめている。

「リオン」
リオンの方を向き、口をはっきりと大きく開き
声を出すと彼は反応する。

「アアー!!」

笑顔で答えてくれるが、
発音がぎこちない。

自分の話している声がはっきりと聞こえてないためだ。

「どうしてこの子がこんな目に会うのだろう。

これは夢であってほしい。
そう、明日になれば何もなかったかのように、
いつも通りのリオンに戻っていてくれる。」


と、現実味のない希望を胸に抱きつつ麻衣は家に着いた。
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