運命のヒト

卒業

もうすぐ、卒業。

俺らの義務教育が終わる。

それと同時に俺は大人の仲間入りを果たす。


今までみたいな生活はできない。

働くということはそんなに楽なことじゃない。

俺は俺なりに決意をした。



「なぁ~、文集書かないかんらしいぞ!」

健二がそんなことを言ってきた。

「何や、それ?」

「卒業文集に載せる作文みたいなもん?」

「へぇ~・・・」

卒業文集とか、今までの俺にはどうでもいいもんだった。


だけど、今は、その文集でさえ大切でしかたない。



俺達は、担任のセンコウのところに行って、文集の話を聞いた。

「何でも思ったこと書けばいいぞ!」

センコウはそう言って、俺達に紙を渡してきた。



下駄箱に着くなり、健二は何か書き始めた。

なんで、お前はそうスラスラと書けるんや?

俺は何を書いたらいいのかさっぱり分からなかった。


「出来た~!!」

健二がそう言って、俺に見せてきた。

「何や、コレ・・・」

健二は紙いっぱいに

『T中最高!!3-1最高!!!』

と書いていた。

その左端に小さく『松田健二』と書いていて笑えた。

たぶん、T中最高!!とかをでかく書きすぎて名前を書くスペースがなくなったんだろうな・・・。


・・・ってか作文じゃなかったっけ?

でも、なんか胸に響いてきた。


健二の言いたいことがたったそれだけで伝わってきた。

< 144 / 177 >

この作品をシェア

pagetop