想い日和 <短>



私達が向かう先。



……違う。

私の足が、自然と動いていたんだ。


……始まりの

グラウンド――



そうしたら、勇気をもらえる。

……そんな気がしたから。



去年のあの日のように、まだ誰もいないこの広い場所は

当たり前だけど、白じゃなくていつもどおりの茶色だった。



どれだけ望んでも

――空は晴天。


太陽の暖かさと、外気の冷たさが、とても心地よく感じた。




「……木村、あのさ――」


……あぁ、

どうしよう。


いざとなると口が動いてくれない。



雪が降ったらなぁ……


真っ白な雪の中なら告える気がするのに――



……違うな。

そんなのただの言い訳、か。



大きく深呼吸。

背筋が伸びる。



北から吹き抜ける冷たい空気を体いっぱいに巡らせて

私は、震える全身を冴えさせた。



「木村!あのさ、私――」


――あと一息。


もう少しのところで、私を遮ったのは

他の誰でもない、木村本人だった。



「だぁーーーー!待て!頼むから……待ってくれ!」

「……え――」





< 23 / 31 >

この作品をシェア

pagetop