愛なんて存在しない
―――ガラッ
「あれ、人いるし」
「!」
3分後ぐらいに、その声と共に誰かが入ってきた
うちはゆっくりとその人に顔を向ける
「…麻己(アザミ)君…?」
「あ、橘か
びびったー、誰かと思った」
教室に入ってきたのは、麻己 虎空(アザミ コク)
面白い名前だったから覚えてただけで、あまり話した事もない男子
麻己君は自分の席に鞄を置くと、わざわざ離れているうちの席の前まできた
「こんな早くに何してーんの」
「や、なんか早く来たかったから…
麻己君こそ、早いね」
「あー、宿題やりたかったから」
「…何の宿題?」
「数学!!」
右手に持っていたプリントをうちに見せてくる
あ…これって…
「うち、これやったよ
見る?」
「マジ!?見る!!」
「ん、ちょっと待って」
キラキラした目で見てくる麻己君に言い、自分のバックをあさる
目当てのプリントはすぐに見つかり、スッと麻己君の前に出した
「はい、これ」
「サーンキュ!!」
何故か敬礼しながら受け取る麻己君
あ、なんか…
怖い人って思ってたけど…意外と面白い
今麻己君の印象が、怖い人から楽しい人に変わった