応援団長の恋するチョコレート
『ちょっとパパ
押さないでよ!』

『お前こそ、前に出過ぎだ』

『だって写真が撮れないんだもの!
声だけでも録音しないと』

『大丈夫だ!
ビデオカメラが録画中になっている』

ドアの向こうから聞こえてくる声に
俺は驚いて
ビデオカメラを見た

確かに録画中になっていた

だがレンズには蓋がしてあった

驚かせるなよ!

俺は立ち上がると
また部屋のドアあけた

「いい加減にしろよ!」

「ああん、もう!
お兄ちゃんが怒ったじゃない」

「お前がしゃべるから
バレたんじゃないか!」


俺は深いため息をついた

なんて親だ

俺は振りかえって
東條を見た

「あれって妹さんだよね…」

東條は窓のほうを指さしていた
窓から
妹がひらひらと手を振っていてる

手にはビデオカメラがあった
ニヤニヤと笑いながら
妹がさっきのキスシーンを再生する

「こらっ!」

「怒るなら親父にね~
私は買収されただけだから」

「いくらだ!」

「一万」

「なんて妹だ」

窓をあけて
俺の部屋に入ってくると

うんうんと満足げに
頷きながら出て行った

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