ファ−スト スト−リ−
出逢い
夜ともなればその厳しさは増し、雪は毎晩の様に激しく吹き荒れていた。でもその日の夜だけは、少し違ったのである。空の色は藍色に晴れ渡り、空中の、遥か高い所まで昇り詰めた月が、偉大な太陽の輝きを貰い、銀盤の様に、明るく照らし出されていた。その月は、大地に積もった雪原を、何処までも、何処までも照らし出していたのである。 静けさは研ぎ澄まされ、頬に触れた空気は凜と張り詰めていた。それはまるで、世界中の音という音を、取り去ってしまったかの様に思われる程だった。そんな日の夜に、一つの愛が生まれるのである。そっと忍び足で近付く様に、次元の壁が、フルフルと揺れても、世界中の人々に気付かれる事も無く、その愛は、とても静かに動き出すのだった。
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