冬うらら2
●4
 うわぁ。

 軽トラックの助手席は、懐かしい世界を彼女に見せてくれた。

 父親は、乗用車も持っていたけれども、仕事の関係でトラックも持っていたのだ。

 軽ではなかったが、やはり乗った時の目の高さの違いが、昔を一気に甦らせた。

 座り心地の悪い座席も、バックミラーから見える景色も、どれもこれも懐かしい。

 あまり嬉しそうではないカイトが、運転席にいる。

 何故か、彼はこの車に乗せたくないようだった。

 アパートの鍵だけ借りて、一人で行こうとしたのだ。

 そんなこと、メイがOKを出せるはずがない。

 カイトに見られたくないものも置きっぱなしにしているし、最後なので掃除もしてこなければならないし。

 不動産屋にも、ちゃんと話しに行かなければならない。

 彼女でなければいけない、ということがたくさんあったのだ。

 それで、ようやく一緒に出かけることになった。

 そう。

 一緒に―― 出かけたい、というのもあったのだ。

 カイトと一緒に過ごした記憶は、本当に短いものだった。

 そのどれもこれもが濃度の高い、信じられない出来事ばかりだったので、物凄くたくさんあるように思えるが、日数で考えれば、まだほんの一月半ほどだ。

 一緒に写真を撮ったこともなかった。

 だから、二人が一緒にいるという証拠は、役所に行って書類で確認するか、こうやって本物がそこにいる時にしか分からないのだ。

 一緒にお出かけ。

 その事実は、たとえ引っ越しという名目があっても、こっそり彼女を嬉しがらせていたのだ。

 しかし、残念なことに、アパートまではそんなに遠くはない。

 あっという間に、ドライブは終わってしまった。

「す、すぐ荷物を積めるように片づけるから」

 メイはカギを開けて中に入ると、バタバタと荷物をまとめ始める。

 家から、段ボールや袋を持ってきていた。

 段ボールは最初どこにあるか分からなかったけれども、カイトがパソコン関係の名前がついている箱をたくさん出してくれた。
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