冬うらら2
□
目をそらしたのは、メイの方だった。
どうしよう。
そんな表情だった。
それで分かった。
彼女は、ちゃんとこれが『あのカップ』だということを、分かって持ち出していたのだ。
何故?
他の食器は、これだけ不揃いだ。
おそらく、必要最小限のものだけ、この家で揃えたのだろう。
なのに。
メイは、このカップだけは、家から持ち出していたのだ。
何……で?
カイトは、ワケを考えようとした。
彼の回路は、女性の考えについていけるような仕組みではなかった。
けれども、メイのことだけは理解したかったのだ。
一緒にお茶をしたカップ。
カイトと。
そんなに長い間のことではない。
夕食の後。
別に何を話すワケでもなかった。
彼女はお茶を飲み終わると出て行って、『おやすみなさい』と言った。
事実ばかりが、カイトの頭の中でグルグルと巡る。
どこかに、真実が落ちているはずなのに、彼があまりに早くページをめくるものだから、端っこに小さく書いてある文字を片っ端から見落としていくのだ。
「忘れたく…なかったの」
めくり続けていたページが、自分から呼びかける。
小さな声で。
カイトは慌てて手を止めて、そのページの中の女性を見る。
「あの時間のことを…ううん、カイトのことを忘れたくなかったの……だから…勝手に…ごめんなさい」
思い出に。
ページの中に住む女性は、頬を微かに赤くして。
唇を震えさせて。
目をそらしたのは、メイの方だった。
どうしよう。
そんな表情だった。
それで分かった。
彼女は、ちゃんとこれが『あのカップ』だということを、分かって持ち出していたのだ。
何故?
他の食器は、これだけ不揃いだ。
おそらく、必要最小限のものだけ、この家で揃えたのだろう。
なのに。
メイは、このカップだけは、家から持ち出していたのだ。
何……で?
カイトは、ワケを考えようとした。
彼の回路は、女性の考えについていけるような仕組みではなかった。
けれども、メイのことだけは理解したかったのだ。
一緒にお茶をしたカップ。
カイトと。
そんなに長い間のことではない。
夕食の後。
別に何を話すワケでもなかった。
彼女はお茶を飲み終わると出て行って、『おやすみなさい』と言った。
事実ばかりが、カイトの頭の中でグルグルと巡る。
どこかに、真実が落ちているはずなのに、彼があまりに早くページをめくるものだから、端っこに小さく書いてある文字を片っ端から見落としていくのだ。
「忘れたく…なかったの」
めくり続けていたページが、自分から呼びかける。
小さな声で。
カイトは慌てて手を止めて、そのページの中の女性を見る。
「あの時間のことを…ううん、カイトのことを忘れたくなかったの……だから…勝手に…ごめんなさい」
思い出に。
ページの中に住む女性は、頬を微かに赤くして。
唇を震えさせて。