冬うらら2

 カメラは、シュウに預けてある。

 その点については、ハルコは一切心配をしていなかった。

 彼の報告によると、あの速攻の指輪交換を、きっちり撮影できたというのだ。

 思いがけず、有能なカメラマンだったのだ。

 副社長のカメラに狙われたら、カイトであったとしても逃げることは出来ないだろう。

 一方、自分の夫と言えば、あの指輪の交換で新郎に出し抜かれた一人だ。

 まあ、あの状況ではシュウの方が神業であって、ソウマを責めるワケにはいかないだろうが。

 だから、彼女はゆっくりと自分の席に座って、ウェディングケーキに近づく二人を見ていればよかったのだ。

 だが。

 あら?

 ハルコは、瞳をまばたかせた。

 いままでの二人とは、ちょっと雰囲気が変わっていたのだ。

 周囲の視線を気にしているというのが、ありありと分かる入場の時とは大違いで―― 特にメイが、ようやくこの酔わせる雰囲気に、浸されているように思えたのだ。

 吸いの悪いスポンジだったが、今にして染み渡ったようである。

 その香りにアテられたのか、カイトの雰囲気も変わっていた。

 まあまあ。

 ハルコは、目を細めた。

 ようやく、この一瞬だけは、普通の新郎新婦のように見えたのだ。

 絡み合うような、割り込めないような雰囲気が、二人の周囲に小さなドームを作っていた。

 何か、魔法でも使ったのかしら?

 メイ一人で、いきなり『うっとりモード』に突入することなどないだろう。

 彼女の性格からすると、余程のことがない限りはスイッチが入らない。

 なのに。

 いまは、全部手放しでカイトに、思いを寄せているのだ。

 ケーキに、ナイフが入る。

 一斉に、フラッシュの雨が降り注ぐ。

 その野暮な嵐で、魔法が解けてしまった。

 はっと我に返ったように、二人ナイフを引いてしまったのだ。
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