生徒会長様の、モテる法則


コスプレレストラン…ではイメージが悪いと全体的にコンセプトが修正され、結果行き着いたのは“世界旅行”をイメージした世界中の料理が楽しめ、店員が様々な国の衣装を身にまとって接客するというものだ。


日本なら着物で寿司。
中国ならチャイナで中国料理と言った具合に。


接客組と調理組に別れており、私は接客組、委員長は調理組だ。
なんでも委員長の家は何とかって海外の本に載っている五つ星レストランの一つだそうで、その恩恵を受けて育った彼は生粋の職人らしい。

すげぇな…兄貴。


ますます尊敬だ。



兄貴に続いて教室に入ると、凍えるような風を頬に感じて、私は立ち止まった。
冷房をガンガンに効かせたような室内に渦巻く吹雪。
その中心には、要冬真。




――…まだ怒ってる!!




昨日、ユキ君が目を剥き私が泣きそうになり要冬真が今にもぶち切れそうになっている三者三様の空気が混ざり合った生徒会室を、鼻歌混じりで諸悪の根源・桐蒲葵が退室した後の話だ。


重い空気の中無言の時間が続き、珍しく自分の足でやってきた海ちゃんや他のメンツが集まってからも、モヤモヤと苦しい感じは抜けずじまい。
まぁ、要冬真の機嫌が悪い事。

「あぁ」だの「そうか」だの、必要最低限の会話しかしない生徒会長の異変に気付いた役員一同は、早々に話し合いを切り上げ帰宅。


次の日になって、機嫌が直っていると思ったら大間違いだ。


泣きたいのは、こっちだってのに。


ただならぬ教室の空気を感じ取った委員長は、そそくさと自分の席に逃げていき、私も要冬真を観察しながら席に向かう。

意外にも、私が嫌だったのは“葵にキスをされた”ということよりも“他人とキスしている所を要冬真に見られた”ということだった。

だからあのタイミングで現れたヤツを見た時、正直泣きそうになったし実際ちょっぴり涙ぐんだ。



ちょっとだけね!



それを見て満足したのか、葵は嬉しそうにこう呟いて出て行った。



『やっぱり、泣いた顔が一番そそるね』



鬼畜!!
あのドS野郎が!




< 134 / 307 >

この作品をシェア

pagetop