生徒会長様の、モテる法則

6-5 接客






――…あの人心臓に悪い…



なんだあの大人の色気は!
恐ろしい…あれで婚約者もオトしたに違いない。

それから久遠寺くんと別れて、私は再び第五調理室の前に居た。

当然、彩賀親子が居ない事を確認してだが。

朝から騒がしい事続きなので、ちょっと控え室で休もう。



そう思い、部屋の扉を開けた瞬間だった。


開けるなり耳ばかりか全身へ刺さるように飛んできたのは女生徒の悲鳴。

ああ、ここには恐ろしいほど地球の中心的なヤツが居るんだった。


このイベント棟というのはそもそも、生徒達の教室がある本校舎・音楽室や理科室のある第ニ校舎から少し離れたところにある真新しい棟で、その名の通りイベント時に使われる場所だ。

その為この、第五調理室は豪勢なキッチンと洒落たイスやテーブルが並ぶ広めのフロアで構成されており、そこに皆で装飾を加えたものだから、見た目はどこぞの高そうなレストランのようになっている。

まだ始まって一時間経っていないというのに店は大盛況、視界いっぱいに見える椅子はほぼ埋まっており7割方女子。


店の名前は“Weltreise”。
ドイツ語だかフランス語だか知らないが“世界旅行”と言う意味らしく、前にも説明したように世界の料理が楽しめ、さらに様々な国の民族衣装を着た私達が接客するという珍しいコンセプトなので混雑は多少、予想していたのだが。


大事な因子を、私はすっかり忘れていた。




「お待たせしました。アイントプフでございます」





ワイシャツにネクタイ。
カーキー色ジャケットに赤い腕章。

黒いベルトはヤツの腰の細さを物語っており、すこし緩めのパンツは高い位置で黒いブーツに収まっている。

斜めにかけられた刀は勿論偽物だが、抜刀することも出来るらしい。

制帽についている帽章も嫌に立派だ。




――…滅茶苦茶似合ってるし




軍服姿の、要冬真である。
男モノの民族衣装は少なく、あってもマニアックなモノばかりでクラスで実際に採用されたのは極僅か。


それで取り入れられたのが“軍服”である。


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