生徒会長様の、モテる法則

sp-3 モテる男の朝




アホ二人の白熱したトークが終了し彩賀さんが席へ戻っていった頃、私は前方にある未だ空席の椅子へ視線を移した。


彩賀さんのはた迷惑な等身大チョコレートよりも葵の恐喝よりも厄介な問題は、あの空席に座るはずの男。



一応、強いて言えば多分、ヤツは私にとって去年まで存在しえなかった“チョコレートを渡す相手”になる。



なんか自分で言ってすごい恥ずかしいが、そこは否定出来ない。




――…なんも用意してないよ私




手に持ったままのビニール袋に視線を移した。
ハルがくれたその中からは仄かに甘い匂いがする。

っていうかこれ何?



一口大の丸いラメ色の包みはおそらくチョコレート。
赤や青と、色とりどりの包装は可愛らしい。
一緒にピストルが入っているのが一番の謎だが。




「ハル、これ何?」



「んー?チョコレート」


「知ってます。何逆チョコ?」


「ちがうよー、だってリン覚えなかったでしょー?」



ハルは机に体を倒し両手を伸ばして伸びをしながら此方を見上げて嬉しそうに笑う。
見透かされていたのが何だか悔しいが、それがこのビニール袋と何の関係があるのか分からない。




「チョコなんて用意してないでしょー?とうま可哀想じゃん」


「!!」



かわいそう!





「すきなひとからは、何でもいいからもらいたいじゃん!だからー今日はとりあえずそれあげて、別の日に手づくりしてわたしなよー」




ハルの機転の利いた案に感心しながらも、私はビニール袋にあるチョコレートを一粒取り出して包みを開いた。

途端に甘い香りが鼻をくすぐる。



「このピストルは?」




「あー…それは護身用だよー」



「え!?何を?何から何を守るの!?見当も付かない!」



「んー…」




彼の言葉の意味を図りかねて、不安を手伝い声を荒げるとハルは少し考える素振りを見せ、ちょいちょいと手招きをした。




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