生徒会長様の、モテる法則



「確かにそうですね…それじゃあ…」



一瞬瞼を落としてゆっくり睫毛を持ち上げる。
横目で私を見据えた彼は弧を描くように目を細めて体を少しだけ乗り出した。


長い睫毛の音が聞こえそうだ。



「この間の借りを返すというのは、どうでしょうか」


「え?なにそれ覚えが全く…ハッ!!」






『じゃあ鈴夏さん、貸し“1”でお願いしますね』




――…貸し…、だと…?






あったー!
忘れかけてた記憶の底にあったァァァア!



深月さんに会う為に協力してくれたのは久遠寺くんで、いや…協力か?

彼が働いていた喫茶店に入るのを躊躇っていた私を強引に連れ入れたのは目の前で笑顔を貼り付けているこの男。

かなり無理やりであったがきっとあの時久遠寺くんに偶然会っていなかったら店に入ることも深月さんと話をすることも叶わなかったはず。


まぁ…結局あの後隣に引っ越してきたんだが…。




「どうです?返す気になりました?」




「…っ…」



さらに顔を近づけ私の顔を下から覗き込むように見上げた久遠寺くんのまばたきの音が聞こえる。
艶っぽい瞼に心臓が跳ね返った。

何となく後ずさるが、腫れた足が邪魔で思うように動かない。


なんでこの人こんなに色っぽいの…!




「あ…あの…」



「借りは返す為にあるんですよ?ね?」


そ…

「…そうです…」



「なら、…ね?」



なんでこの人は所構わず妙な事ばかり言うの!
しかも理屈まで付けられたら突っぱねたくても突っぱねられない。
逃げるように泳ぐ目を捕まえられたら最後、絶対息の根が止まる。

ああぁぁ…誰か助けて



冷や汗が流れた瞬間、遠くで小さいが荒々しい物音が聞こえて体が飛び跳ねた。

保健室の扉を引く音だ。
先生が帰って来たのだろうか。

久遠寺くんは目だけで振り返り、閉められカーテンを先を確認して小さいため息を付く。

「意外に早かったですね」



久遠寺くんの言葉の意味を理解する前にカーテンが開かれた乱暴な腕の先には、奴が立っていた。
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