生徒会長様の、モテる法則

2-4 死闘





私は、完全に現実を舐めていた。
アニメや漫画なら、敵が強いと判明した時点で修行編に入るものだから、てっきり流れで滝に打たれにでもいくと思っていたのだ。


しかし完全にその部分は飛ばされ、ボス戦に。


ピッコロなしのラディッツ戦のようなものだ。


呼び出された以上、尻尾を巻いて逃げるわけにも行かず、というよりも今までこういう呼び出しに逃げ出した事がなかった私の意地だった。


中庭のソメイヨシノは、もう殆ど散っていて寂しく枝だけが風に揺れている。


私は木にもたれ掛かってとりあえず、彼女を待つことにした。



思えば、女の子からの呼び出しは初めてだ。

バレンタインに女の子からチョコレートを周りの男子に負けず劣らず貰っていたが、流石に告白とかはされたことがない。


私の男勝りは本物だったが、アニメのような展開は皆無だ。


あんなの、よくよく起こってたまるものか。






「お待たせしました、仁東さん」





風が吹き抜けると同時に聞こえた優しい音色。

ウェーブのかかった長い髪が桜と一緒に流れていく。

長い睫毛が影を落とす頬は桜のそれと同じ色だ。


「来てくださらなかったら、どうしようかと思いました」



そんな上品な言葉からは想像もつかないが、堂々とした振る舞いはさすが道場の一人娘と言ったところか。




「逃げるわけないっしょ、そんな子供じゃあるまいし」




挑発するように私が言えば、彼女はニコリと笑う。

瞳の奥に見え隠れするのは強い意志。
さすが、格闘家の卵。

いや、もう一人前かもしれない。


こちらに向けられる闘争心剥き出しのオーラに体中が逆立つのを感じた。


「道場の娘って凄いね」


「あら、ご存知でしたの。なら話は早いですわ」






―…お手合わせ、お願いします





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