生徒会長様の、モテる法則
「なんだお前ら。騒がしい」
久遠寺くんで扉は見えなかったが、色気のあるアルトの声と共に入ってきたのは諸悪の根元。
ハルが「とうま」と呟いたのが聞こえた。
「けっ、あんたをどう潰そうか相談してたんだよ!」
私が生徒会長椅子にふんぞり返るように座ると、奴は動じもせずニヤリと笑う。
「そんなわけないだろう、アホか」
「カッチーン!人間と言うのはな、常に表あれば裏あり!渡る世間は鬼ばかりなんですよぉ坊ちゃま?」
立ち上がり、両手を思い切りついて体を乗り出すと要冬真はわざわざこちらまで歩いてきて、片手を机の上に乗せた。
「世の中の厳しさなんてなぁ、俺様はよーく知ってるぜサル。でもな、こいつらは俺の悪口なんて言わねーよ」
何ですかこの自信。
少なくとも私はあんたが嫌いだよ!!
どこが嫌いかっていうとなぁ……、よくわかんないけど全部!!!
あれ?
まぁいいや!
とにかくその偉そうな態度が気に食わない!!
「まぁまぁいがみ合いはその辺にしてください二人共」
鼻が付きそうになるほどの近さでメンチを切り合っていた私と奴の間に、大きな両手が入り込み互いの頭が掴まれ一気に引き破がされた。
「あなたと同じクラスの、彩賀涼華の話をしていたんです」
「あーあの道場の娘か、そいやぁサル。生徒会室の前にお前宛ての手紙があったぜ」
「手紙?」
要冬真が、思い出したように持っていた一枚の紙を机の上に置いた。
清潔感のある白い便箋。
いかにもラブレターのような雰囲気だが、書かれているのは私の名前だ。
封を開けて中身を覗くと、可愛らしいピンクの線の上に乗る女性らしい丸めの字が見える。
仁東鈴夏様
本日放課後
本校舎中庭・ソメイヨシノの前まで来られたし
「キャー!!!」
「うわ!果たし状!」
ハルがいつの間にか横から手紙を覗き込んで、楽しそうな声を上げた。