生徒会長様の、モテる法則



私の様子を全身追うように確認した後、ハルを見下ろす。


「ちゃんと見とけって言ったろ」


「だってー!ウンコかと思って!」




「…?」



なんだ??




舞台が多少ざわついているので、二人がどんな会話をしたのかが上手く聞き取れない。

しばらく二人の様子を見ていると、ハルの頭に軽く手を乗せた要冬真は長い足数歩で私の前に立った。






「やれるのか」





今まで、聞いたことのない優しい声。
人を心配するなんて、するような人ではないと思っていたので突然の言葉に少し戸惑ってしまう。

それでも、答えは一つだ。






「当たり前でしょ?勝つか負けるか、喰うか喰われるか。私は逃げないわ」









私の言葉を、待っていたかのように奴は笑う。
スレ違いざま、耳元に小さな言葉を残して奴は私の前から去っていった。






――…一人にはなるなよ、絶対だ






あいつは、知っている。
それを踏まえての“やれるか”だったわけね…。
いくら俺様野郎とは言えど、やはり陰湿なイジメやらは嫌いらしい。

まぁ、あれだけモテりゃそういう事件はいくつもあったでしょうに。



芸能人のように、全校の女子から一線引いてるのはその為か。
最近気付いたのだが、いくらモテようと何だろうと、奴が特定の女子と話しているのは見たことがない。


つまり、彼女がいない。



要冬真の掟に

“要冬真が認めた女子には文句を言わない”

みたいのがあるのだから居ても問題ないはずだ。




しかも、本人があんな感じだから、彼女なんて選り取り見取りでとっかえひっかえだと勝手に思っていたが、そうでもないらしい。



いや、もしかしたら外部に年上の彼女が…?





“トーマ嫌い!”




唐突に、思い浮かんだのは海ちゃんの台詞だった。
あー…すっかり忘れていたけどあいつには大事な幼なじみがいるんだ。




私は幼なじみに良い思い出はないんだけど。



やっぱり、幼なじみの恋ってやつ…!?きゃー!

< 56 / 307 >

この作品をシェア

pagetop