生徒会長様の、モテる法則


そんなハルの言葉を無視した5分後。


「だぁー…さみぃー」



向けられる沢山のドライヤー。
全身ビショビショの私。
迫る開演時間。



「水道の水出し過ぎたって、どんだけだよ。頭からビショビショじゃねーか」



委員長が呆れた顔で私の顔面に温風をかける。
髪の毛は急いで乾かして、何とか元の形に。
顔にはあまり水が掛からなかったのでメイクは落ちなかった。


「衣装は、流石に乾きませんわね」



彩賀さんが難しそうに私の体にドライヤーを向けた。
確かに、10分かそこらで衣装が乾くとは思えない。



「少し見栄えは劣りますけれど、違う衣装がありますの。そちらに着替えますか?」



「いやいや!平気!せっかく作ってくれた衣装だし!」



元が良いからか、水を被った所で外観が変わる様子のない衣装を見下ろして、私は親指を立てる。

ジュリエット用に作られた衣装を、ジュリエットが着なくてどうするよ!!!






それに…!







奴らの嫌がらせに屈したみたいで悔しい!

トイレの個室で、上からバケツでひっくり返したような大量の水が落ちてくるなんて、普通じゃあり得ないし事故なはずもない。

となれば考えられるのは、要冬真に関する事だ。


大方、私が要冬真に構われているばかりか反感を食らっていた女子達とも仲良くなりはじめた事を快く思わない人達の犯行だろう。


そんな執着だけの相手に。


はいおいそれと負けを認めるわけにはいかない。



それよりなにより!
クラスの出し物を台無しにしようとするなんて、ムカつく。




「私負けない!」



「大丈夫だよー!馬鹿は風邪引かないって言うじゃん?」



「ハル、私が抱きしめてあげよう」



「やだ!冷たいもん!」




「ちっ…」


私が両手を広げてハルに近付くと、彼は間合いを取るように後ろへ一度ジャンプする。

するとその後ろから、要冬真が現れた。

< 55 / 307 >

この作品をシェア

pagetop