溺れる唇にキスを



振り返るとドアに
もたれかかった影があった。


「俺チョコレート貰いすぎたんで、
先輩一緒に食べませんか?」



少し癖のある、焦げ茶色の髪の毛が
ふわりと揺れる。


少し長めの前髪から覗いた、
大きなアーモンド形の目。


少しゆるんだネクタイは、
赤と黒のボーダー…。


ってことは一つ年下じゃん。



「先輩聞いてるの?」


人懐っこい軽い口調が
頭の上から降ってきて、
はっとするとすぐ目の前に彼がいた。


「あなた…誰?」

「俺のこと、気になんの?」


この子…なんなのよ。

悪戯に光る瞳に、
なんだか負けている気さえしてくる。


「…気に……なる」


悔しいけど、
やっぱり好奇心には勝てない。

それに、なんとなく気になる。


「俺は先輩のことが気になる」


にっこりと笑って、
チョコレートを
口に含んだ彼に
一瞬心臓がドキドキする。


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