ユリの海

マキ

今日も生徒指導室で反省文を書いてる。


私はもう喫煙しません。
私はもうケンカしません。


毎日同じことを書かされてどうにかなりそうなんだけど。



少し前までオレの人生順調だったのに。



サッカーを始めたのは5才だった。


初めはただおもしろがってただけだったんだけど、
小学校、中学校となるにつれ実力をつけ、大会では得点に貢献した。


気付けば県のMVPに選ばれるようになり、地元では天才ともてはやされた。


もちろん今の高校にはサッカー部の特待生として引き抜かれた。



友達、彼女、待遇
頼まなくても勝手にやって来てくれるようになり、
何不自由ないサッカー人生を送っていた。

オレは周りから一目置かれる存在。誰もが羨む天才サッカー少年。


ところが今は違う意味で一目置かれる存在。


高校入学後すぐ春の大会に当たり前のように選抜出場した。


開始20分。
相手チームのスライディングを飛ぶようにかわして着地した瞬間、バチン!


右膝の靭帯が裂けてぐちゃぐちゃになった。
数ヶ月して痛みは退いた。
久しぶりにグラウンドで走ってみると鈍い音と一緒ににまた膝が崩れた。


医者の話だと、
サッカーをしたいなら手術、リハビリ会わせて2年以上は必要だそうだ。


2年。
国体が終わってんじゃん。
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