それでもわたしは生きている
「タチバナさん、注射とか採血とか嫌いですよね」

「むっちゃ嫌い!」

「じゃぁ、明日、針見ない方がいいですよ!めっちゃ太い針ですから」


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!



手術の前日、麻酔担当がやってきた。

「術後の痛み止めの点滴をするかの確認です。何十万人に1人、この痛み止めにより下半身麻痺になる方がいらっしゃいますが、まず大丈夫でしょう。しますか?」


下半身麻痺?
まず大丈夫?
なんで?


「痛み止めせんかったらムッチャ痛い?」

「痛いですね」


麻酔担当は淡々と言う。

私も1度経験してれば耐えれる痛みかどうか判断出来るが、そうもいかない。

お腹をバッサリ切った後って、痛いんかな…

痛いに決まってるよな…

半身麻痺にならないことを祈るしかない。

「はい…します」

「じゃ、ここに署名して下さい」



病気になった人間は、少しでも痛みを抑え、良くなりたいという思いから、感じの悪い医者がいても

『お願いします』

と頭を下げるしか出来ない。

そんな患者を相手に、偉そうに淡々と話す医者に命を預けるのはとても納得がいかないけど、仕方がない。
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