悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
待ち合わせの時間に間に合うように、ドレスアップして家を出た私は、爽やかな春風の中、いつものように潤と並んで歩いている。

……でも、残念ながら「いつものように」ときめかない。

というのも。
私たちの3歩前を、黒尽くめの男が歩いているからに決まっている。

身長180センチくらい?
でも、存在感を振りまいているのは、決して身長のせいだけではないと思うの。

葬式帰りを彷彿とさせても良いくらいの黒スーツを身に纏っているというのに、ここまで派手な雰囲気が撒き散らせるのは、いったいどういい趣向なのかしら?

私は思わずため息をつきたくなる。

だって、どちらに向かうか知らないくせに、先頭を歩いて横柄な態度で道を聞いてくるんだもの。
道が分からないなら、後ろか、せめて隣を歩くべきじゃなくって?

人のマナーとして。



天真爛漫を絵に描いたような潤も、今日ばかりは大人しい。
借りてきた猫、ならぬ。
貸し付けられた子犬のようだ。

尻尾がしゅんと、項垂れているようにさえ見えるもの。

< 43 / 88 >

この作品をシェア

pagetop