悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
椅子に座り、呼吸を整える。


何度も、何度も。
指が覚えるほどに、身体で唄えるほどに。
弾いたんだから、うん。

最高の演奏にして見せるわ。

私はそっと、鍵盤に指を乗せる。

激しい音からこの曲は始まる。
そして、一瞬の静寂。
それに続くモチーフの展開。

音量を変え、強さを変えて、モチーフを連ねていく。

「悪魔的暗示」


そう。
まるで、悪魔を呼び寄せるようなおどろおどろしいフレーズの連続。
でも、その中に。
軽やかに踊る音符たちが居るの。


……分かる?
重々しい音の中で、華々しく踊る軽やかな音。


どうか、聞き漏らさないで。
はっとするほど、重たいこの世界の中で。

形を変え、ヴォリュームを変え。



そこに、間違いなく。
煌くあなたが存在しているの。


あの日、初めて悪魔にあって。
魅了されてから私。


すっかりこの曲の解釈が変わってしまったわ。
自分でも驚くほどに。
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