秘宝-戦い-第Ⅰ幕
「行こうよ!
グズグズしてる間に時間は過ぎていくんだよ?
無駄じゃん」

「人間界に戻る方法は…?」

「そんなの、どうでもいい!!
夢で女の人に言われた。
私しか救える人は居ないって!
他にもいろいろ言われたよ?
毎日、誰かが連れ去られたりしてるって」

アレンは頷いた。


彼はこの国を救えるのは、自分と有香だけだと思ったのだった。


有香は笑顔で頷いた。

「私、人間界に戻れなくてもいいよ」

有香は小さく言った。


人間界に戻れなくても、この国を救うことが自分に課せられた使命なのだから…
その使命を果たすまでは、戻れないと思ったのだ。



アレンは軽く頷き、図書室を出た。

そして、家臣のもとへ行った。

有香は静かに着いて行った。


城の中は静かで、二人の足音だけが響いている。

有香は不気味な気がして、アレンとの距離を縮めた。


アレンは赤い扉の前で立ち止まり、ノックをして中に入った。


「シオン、わたしだ」

「アレン様…
どうなさいました?」

シオンと呼ばれた女性は振り返り、どこからともなく椅子を2つ出した。

「シオン、お前は俺が1番信頼出来る家臣だ。
わたしは今からこの女性と共に旅に出る。
それまで、城を任せた」

何で、アレンは自分のことを「俺」と言ったり「わたし」と言ったりするのだろう?
有香は疑問を持った。

「旅に…ですか?」

女性が棚から出したカップを床に落とした。

バリンッと大きな音がした。


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