秘宝-戦い-第Ⅰ幕
「そうだ。
この国を立て直すために、わたしは出かける。
他の者には、旅に出たことを隠せ。
王は病気になられたとでも、言うがよい」

「どうして、旅に出ることを隠すの?」

有香は聞いた。

「わたしが旅に出ることが知れ渡れば、妖怪たちの耳にも入る。
そうすれば、この国の人々の命が危険ではないか?」

「あっ、そっか…」



「分かりました。
アレン様、お連れの方、お気をつけて下さい」

シオンが言った。

「あぁ。
任せたぞ、シオン」

「はい」

シオンの返事を聞くと、アレンは部屋を出た。

有香はシオンにペコリと頭を下げて、急いでアレンを追った。


「ユカ様、明日の朝出発しますか?」

「今、すぐでしょ」

「ですね」


アレンは部屋からマントや食料などを出した。

茶色いマントを有香に渡し、食料などの入ったカバンを持った。



アレンは城の大広間に家臣や料理人など、城で働くすべての人を集めた。

「聞いてくれ。
この女性はシャリアン様のご子息、ユカ様である。
今夜、わたしたちは旅に出る。
この国を救うためだ」

「アレン様…」
「アレン殿…」

人々がアレンを見詰めた。

「わたしが旅に出ている間、国のことはシオンに任せることにする」

人々が不安気に視線を交わすのが見えた。

そして、アレンの右にいる、シオンを見た。


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