秘宝-戦い-第Ⅰ幕
人々がザワついた。

「何故…シオンさんなのですか?」

料理人の男が小さな声で問いかけた。


「シオンは、わたしが一番信頼出来る家臣だからだ」

アレンはキッパリと答えた。

「家臣の方なら、レーガンさんやサイナンさんがおられますが…」

図書室員が小声で訴える。

「何故、シオンではいけないのだ?」

不思議に思って、アレンは聞いた。


城の人々は自分の父が王の頃から、アレンを慕っていた。

アレンの言葉を信じた。

しかし、今日は質問が多い。

何故だろう…?


「シオンさんは女性です」

料理人がためらいがちに言った。

「男女は関係ないのではないか?」


大広間は静まった。



「わたしは、旅に出る。
急用があれば、伝書の鳥を遣わせばよい。
よっぽどでない限り連絡はするな。
敵が読む可能性がある。
…そうだな、暗号文にして送ってくれ」

アレンはそう言うと、人々に笑いかけた。

「無事、戻ってくるよ」

人々はその言葉に安心したのか、表情が和らいだ。


「お気をつけて…」

シオンさんが私とアレンを見ながら言った。

「お気をつけて」

「気をつけて下さい」

人々が次々に口を開く。


アレンは笑って、答えた。

有香も笑いかけた。


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