月と太陽の事件簿3/ツといえばカ
どこか憂いを含んだ瞳とあいまって、浮世ばなれした印象を受ける。

会議中の生真面目な表情から一転、岸警部は親しみをこめた笑みを浮かべた。

「なんだ、達郎くんじゃないか」

「すみません、会議中にお邪魔しまして」

あたし日野麗実のイトコ月見達郎は、申し訳なさそうに頭を下げた。

「いや、構わんよ」

警部は右手を振った。

達郎は民間協力員として多くの事件を解決している。

警部にしてみれば身内も同然。

それに警視総監の息子を邪険にはできない。

「どうしたんだい、今日は?」

「警部に頼まれてた本を持ってきました」

達郎は手にしていた本を差し出した。

本の表紙には「都内スイーツマップ2009」とあった。

「警部、いつから甘党になったんですか」

隣席の星野警部補の言葉に、捜査員の間からドッと笑い声があがる。

「俺じゃない!」

警部は顔を真っ赤にして否定した。

「女房と娘に頼まれてたんだ!」

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