幼なじみの執事
「絢斗は?」
玄関を開けるとお手伝いさんの喜代美(きよみ)さんが、パタパタとスリッパの音を立て玄関まで走ってきた。
「絢斗さん、今日はもうしばらく帰れないそうです」
「えぇ〜?!絢斗さん、いないの?」
朱里が大袈裟に残念がる。
「わたくしがお茶を用意して、お部屋までお持ちしますね」
「うん。お願い」
執事は表向きのお手伝いといった感じ。
洗濯や掃除などは、喜代美さんがやってくれている。
2階のあたしの部屋に入るなり、朱里はため息をつきながらへたり込んだ。
「仕方ないでしょ?学校なんだから」
「でもぉ、絢斗さんに会いたかったなぁ」
朱里は自他共に認める『絢斗ファン』なのだ。
本人曰く、好きではなくてあくまでもファンらしい。
他の友達も、このことはよく知っている。
「いいなぁ、あたしも葵衣みたいにイケメン執事に甘やかされたい」
「別に甘やかされてないわよ」
「でも絢斗さんは、大学との両立って大変じゃないのかな?」
そう……
絢斗のもう一つの顔は、大学生だった。