幼なじみの執事
タイムリミット
「なんかこの時期になると、重圧がぁ〜」
頭を抱える朱里を見て笑う仁とあたし。
夏休みもとっくに終わり秋が訪れると、受験生なんだと実感せざるおえない空気が教室内を漂ってる。
「葵衣には絢斗さんがいるから、バッチリだよねぇ……あっ、ゴメン」
バツが悪そうにする朱里。
「気ぃ使わないでよ。確かに絢斗の教え方上手いもんね」
乾いたような笑いにならないように意識した。
「でも最近は、春日部さんによく教えてもらってるし」
「葵衣はそれでいいのかよ?」
仁の少し怒りを帯びた低音の声。
「2人に言ってなかったよね?あたし春日部さんとつき合うことにしたんだ」
「ちょっ?!葵衣?」
朱里があたしの腕を掴んで、身体を揺すった。
「何で?!絢斗さんは?」
「疲れちゃった……絢斗のこと考えるの、疲れちゃったの。だから、いいの…
春日部さんは、あたしを大事にしてくれるから」
「呆れた…オマエ全然楽しそうじゃねぇぞ」
「ちょっと仁!」
行ってしまう仁を呼び止めようと、朱里の声が教室に響いた。
「いいよ、朱里。仁が怒るのも分かるもん……けど、春日部さんはホントにイイ人なんだよ?」
大きなため息をつく朱里に、あたしは弱々しく微笑んだ。