幼なじみの執事

タイムリミット



「なんかこの時期になると、重圧がぁ〜」



頭を抱える朱里を見て笑う仁とあたし。



夏休みもとっくに終わり秋が訪れると、受験生なんだと実感せざるおえない空気が教室内を漂ってる。




「葵衣には絢斗さんがいるから、バッチリだよねぇ……あっ、ゴメン」




バツが悪そうにする朱里。



「気ぃ使わないでよ。確かに絢斗の教え方上手いもんね」



乾いたような笑いにならないように意識した。




「でも最近は、春日部さんによく教えてもらってるし」



「葵衣はそれでいいのかよ?」



仁の少し怒りを帯びた低音の声。




「2人に言ってなかったよね?あたし春日部さんとつき合うことにしたんだ」




「ちょっ?!葵衣?」



朱里があたしの腕を掴んで、身体を揺すった。




「何で?!絢斗さんは?」



「疲れちゃった……絢斗のこと考えるの、疲れちゃったの。だから、いいの…
春日部さんは、あたしを大事にしてくれるから」





「呆れた…オマエ全然楽しそうじゃねぇぞ」





「ちょっと仁!」




行ってしまう仁を呼び止めようと、朱里の声が教室に響いた。




「いいよ、朱里。仁が怒るのも分かるもん……けど、春日部さんはホントにイイ人なんだよ?」




大きなため息をつく朱里に、あたしは弱々しく微笑んだ。




< 93 / 180 >

この作品をシェア

pagetop