ふたつの貌(カオ)
霧深き静寂の中で
目が覚めた瞬間に、違和感が身体を伝った。





愛用している枕の感触は何処だろう?

あれ、毛布なんて掛けてたっけ?ちょっと高かった羽根布団の感覚も無い。





けれど身体を覆っているこの毛布の感覚は知っている。懐かしい・・・・?


ああ、そうだ。懐かしいんだ。押入れの匂いが染みこんでいるこの毛布。


ざらざらしてて重くて、でも暖かい。




僕は起き上がって、ぼやけた視界を目をこすって直した。でも、完全に眠気を断ち切ることは出来なくて僕はぐらぐらと横向きに倒れた。




・・・・ん?



何でだろう、浮いたようなこの感じ・・・・




形容しがたい浮遊感に襲われ、次に襲ってきたのはマットの弾力じゃなくて、左肩への鈍い痛みだった。




「ぅあったぁ!?」



静かだった室内に、僕の声はよく響いた。
何だか恥ずかしさがこみ上げてきたからうつ伏せになった身体を元に戻して起き上がる。



痛む左肩を抑えて室内を見渡す。

カーテンがまだ開けられていないけれど、カーテンの向こうが光っているから、もう朝なのだろう。



そして此処は居間であることにようやく気がつく。


後には僕が居間まで身体を預けていたソファがある。毛布は僕の丁度下敷きになっていた。
















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