六花の騎士



メノリは、窓の縁に頬杖をついて夜空を見上げていた


下弦の月は高い位置にある
柔らかい光が差し込んでいた


「メノリ様、そろそろお休み下さい」


すぐ傍にメノリの騎士が近寄る気配がした
そちらは向かずに月を見上げたままメノリは返事をする


「……うん……貴方はさ」


ゆっくりと、首だけ動かしてメノリは問う


「……故郷が哀しい…?」
「…………」


メノリは、その問の意味を知らなかったのかもしれない
ただ、アルメリアが故郷のことを口にして、ティアは多分……哀しかった


それをメノリは気付いたのか、気付いていないのか……


ティアは少しだけ息を吸って答えた



「…はい。哀しいことばかりではなかったのですが……」



それでも、ティアにとってあの白い故郷は………哀しいものになった
湖の様な碧眼が静かにティアを見つめる



「そっか……」



長かった一日が終わろうとしていた








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