泡姫物語
愛子は私の姿を見て笑った。

「あはは、友紀がパンダみたい。こんなに可愛らしい仕種ばかりするのって前の彼氏と付き合う事になった時以来だよね。久しぶりに見たわ」

「愛子に言われるまで自分の仕種がいつもと違うなんて考えもしなかった。自分でもあの時に少し似ている気がする。だいぶ前の事だから忘れてたよ」

前の彼氏というのは約2年ほど昔、私が参加していたテニスサークルのメンバーの吉沢君。
見た目はジャニーズ系で私好みじゃなかったけど爽やかな好青年という印象で、みんなから好かれるような同い年の男の子。

テニスに対して真面目に取り組む姿勢に好感が持てたのと、プレイスタイルの相性が良さそうだったから私から混合ダブルスのペアになってほしいって頼んだのがきっかけで仲良くなった。

テニスには大きく分けてシングルスとダブルスがあり、人によってシングルが得意だったり両方とも得意だったりする。
私はダブルスのほうが得意で、もともと愛子と組んでいるのだが混合ダブルスの相手を探していた。

混合ダブルスというのは男女でペアを組むスタイル。
定期的に大会などがあるのだが、愛子とのダブルスとは別に混合ダブルスというジャンルも経験してみたくて相手を探していたが、なかなか見つからずにいたところに出会ったのが彼だった。

彼もそれまでのダブルスの相手が仕事の都合であまりテニスが出来なくなってしまい、相手を探していたところだと言い、快諾してくれた。

それからは練習で一緒にいることも増え、サークルの練習日以外にも予定を合わせレンタルコートを予約して練習し、食事に行ってはテニスの話ばかりしていた。
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