泡姫物語
美容院から駅へ向かう途中のショーウインドウに映った自分が目に入って立ち止まった。

愛子に着付けしてもらった浴衣。
阿部さんにセットしてもらった髪型。

ふたりに恋愛成就を祈ってもらった私の浴衣姿。

なんだか心強い。あったかい気分になった。

お店に着くといつものように店長が迎え入れてくれた。

「蘭さんおはようございます。今日は藤田様と外出の予定でしたね。その浴衣、よく似合っていますね」

「ありがとうございます。私は控え室で待っているので藤田さんが来店されたら教えてください」

「承知しました」

浴衣姿で階段を上るのは結構疲れるものだなんて思いながら2階の奥にある控え室で呼ばれるのを待っていた。
愛子はまだ来てないみたい。せっかくだから藤田さんが来る前に会っておきたいんだけどな。
10分ほど経ったところで藤田さんが到着したと連絡が入った。
愛子にヘアメイク後の私を見てもらいたかったな。
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